トキファントップページ写真 撮影小話(2)
新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年初めの記事は、トキファントップページを彩るトキを撮影した大山文兄さんの撮影小話 第二弾です。

1月下旬ごろから、それまで群れで行動していたトキたちの姿が徐々に少なくなっていきます。繁殖期を前にペアとなったトキたちが2羽で行動するようになるからです。そして止まり木では、嘴と嘴を重ね合わせ、まるでキスをしているかのような求愛行動も観察されはじめます。
この写真を撮影した時の記録を見てみると、新穂地区にある止まり木に7時10分から6羽のトキがいたとされていました。その中でもこの2羽のトキの様子、なんだかとても仲が良さそうに思えませんか? それもそのはず。2年連続でペアとなり、2022年の繁殖期には3羽のヒナを見事に巣立たせています。
トキが他の野鳥たちと違うのは、多くの個体に足輪がつけられているので、その個体がオスなのかメスなのか、過去にどんな行動をとっていたのかがわかることです。写真左のトキの足輪にはB34という文字が読み取れ、この個体は2017年生まれのメスです。そして右のトキは、この写真では足輪が隠れていますが2014年生まれのオスです。
私がトキの撮影をはじめた頃、ただ撮影するだけで観察記録を残していませんでした。ところが記録を残すようになると、原稿にも深みが出てくるし、なによりも撮影しているトキに愛着が出てきます。足輪の一覧表は、環境省佐渡自然保護官事務所のFacebookでみることができます。
良い写真を撮影するには、シャッターチャンスはもちろん大切ですが、トキを知ることも大切だと思います。撮影や観察の合間に何時ごろ、どの場所に、何羽のトキが何をしていたかだけでも記録してみてください。そして、超望遠レンズやスコープなどをお持ちの人は、足輪から個体識別に挑戦してみてください。撮影や観察の面白さがきっと広がります。

【 撮影者紹介 】
大山文兄(おおやま ふみえ)
産経新聞で2008年のトキ初放鳥から野生復帰取材を継続し、退職後の2020年に佐渡移住。トキのエサ場となる4町歩のほ場管理を行いながら、四季折々のトキの姿を撮影。写真集に「トキ物語 佐渡島から」(産経新聞出版)