野生下で今季最初のヒナ誕生

平成26年4月18日発表の営巣状況です。新潟県佐渡市において、3月19日に産卵したとみられる野生下のトキのペアにおいて、今期最初のヒナが誕生しているのを確認しました。本日時点で、営巣が確認されているペアは20組、そのうち1組で育雛、14組で抱卵が確認されています。

1 ヒナ誕生を確認したペア

(1)個体番号:No.81(2007年生まれ、オス)及び No.66(2009年生まれ、メス)
(2)確認日:平成26年4月18日(金)
(3)場 所:新潟県佐渡市
(4)経 過:

この2羽は、飼育番号No.34(2001年生まれ オス)とNo.58(2003年生まれ メス)の子できょうだい(兄妹)にあたり、昨年の繁殖期において、生まれたヒナ4羽を収容したペアである。
このペアは、3月11日に営巣開始が確認され、3月20日に抱卵するのが確認されていた。4月18日午前9時46分頃、モニタリングチーム(新潟大学職員)が巣の観察をしていたところ、巣上にヒナ1羽の姿を確認した。また、12時10分頃に、親鳥がヒナに餌をあたえる給餌活動を環境省職員等が確認した。なお、これまでの観察経過から、ふ化日は不明である。

(5)ヒナの対応:

きょうだいペアから生まれるヒナについては、昨年と同様に、孵化確認後、飼育下で育てることを目標としているが、今回については、営巣木のある場所の土地所有者が不在(未相続地)であることから、捕獲作業のための土地への立ち入りや捕獲作業に必要な樹木の刈り払いができないため、捕獲を見送ることとする。

 2 営巣・抱卵を開始したペア

(1)個体番号:No.74(2009年生まれ、オス) 及び 足環なし(2012年生まれ、メス)
(2)確認日:平成26年4月17日(木)
(3)場 所:新潟県佐渡市
(4)経 過:

このペアは、2月中から2羽での行動が観察され、3月に入ってから枝を運ぶなど巣造りする様子が確認されていたため、3月19日に、営巣木に樹上カメラの設置を行ったペアである。今回、営巣・抱卵が確認された場所は、樹上カメラを設置した営巣木から約2Km離れた場所で、4月17日午前9時20分頃に、スギの樹上に巣が造られ、巣上に1羽が座り込んでいる様子が確認されたことから、営巣・抱卵を開始したものと判断した。
これまでの観察経過から、産卵時期を推定するのは困難である。営巣場所は、水田に隣接した杉林で、巣は地上から約20メートルの高さに造られている。

野生下トキ
抱卵する個体(No.74足環なしペア、個体不明)

3 営巣を確認したペア

(Ⅰ)

(1)個体番号:No.110(2010年生まれ、オス) 及び No.147(2012年生まれ、メス)
(2)確認日:平成26年4月16日(水)
(3)場 所:新潟県佐渡市
(4)経 過:

このペアは、4月に入ってから枝を運ぶ様子が観察されていたため、注意して観察を継続していたところ、4月16日午前8時10分頃から8時50分頃にかけて2羽で巣造りする様子が観察され、巣材がある程度積み重なっていたことから、営巣を開始したものと判断した。
営巣場所は、水田に隣接する雑木林で、巣は地上から約十数メートルの高さに造られている。

野生下トキ
巣を整える2羽(No.110 No.147ペア)

(Ⅱ)

(1)個体番号:No.85(2009年生まれ、オス) 及び No.93(2009年生まれ、メス)
(2)確認日:平成26年4月18日(金)
(3)場 所:新潟県佐渡市
(4)経 過:

この2羽は、2012年の繁殖期からペアを形成し、昨年も営巣が行われたが、ふ化には至らなかった。このペアは、1月中から2羽での行動が観察され、3月中旬頃から枝を運ぶ様子が観察されていたため、注意して観察を継続していたところ、4月18日午前7時30分頃から8時30分頃にかけて2羽で巣造りする様子が観察され、スギの樹上に巣材がある程度積み重なっていたことから、営巣を開始したものと判断した。
営巣場所は、集落に隣接する杉林で、巣は地上から約十数メートルの高さに造られている。

野生下トキ
巣を整える2羽(No.85 No.93ペア)

4 抱卵中止と再営巣・抱卵を確認したペア

(1)個体番号:No.68(2009年生まれ、オス) 及び No.78(2010年生まれ、メス)
(2)確認日:抱卵中止:平成26年4月15日(火)
再営巣・抱卵:平成26年4月17日(木)
(3)場 所:新潟県佐渡市
(4)経 過:

このペアは、3月27日に抱卵開始を確認したペアである。
4月15日午後12時50分から14時30分頃にかけて、巣が空いた状態となり巣に戻る様子が確認できなかったことから、抱卵を中止したものと判断した。
なお、巣の観察時に巣の下を踏査したが、卵の殻等は確認できなかった。巣内の観察は困難であり、抱卵を中止した理由は不明である。
4月17日9時10分頃、同じクロマツの巣上に1羽が座り込んでいる様子が確認されたことから、再営巣・抱卵を開始したものと判断した。
抱卵を中止した15日以降に産卵した可能性が高いと思われる。

5 抱卵中止を確認したペア

(Ⅰ)

(1)個体番号:No.108(2010年生まれ、オス) 及び No.115(2011年生まれ、メス)
(2)確認日:平成26年4月17日(木)
(3)場 所:新潟県佐渡市
(4)経 過:

このペアは、4月13日に抱卵開始を確認したペアである。
4月17日午前5時40分頃から7時30分頃にかけて、巣が空いた状態となり巣に戻る様子が確認できなかったことから、抱卵を中止したものと判断した。
なお、卵の殻の回収は本日時点で実施しておらず、巣内の観察は困難であり、抱卵を中止した理由は不明である。

(Ⅱ)

(1)個体番号:No.06(2006年生まれ、オス) 及び No.96(2010年生まれ、メス)
(2)確認日:平成26年4月18日(金)
(3)場 所:新潟県佐渡市
(4)経 過:

このペアは、3月31日に抱卵開始を確認したペアである。
4月18日午前5時30分頃から9時45分頃にかけて、巣が空いた状態となり巣に戻る様子が確認できなかったことから、抱卵を中止したものと判断した。
なお、巣の観察時に巣の下を踏査したところ、卵の殻1個分を確認し回収したが、巣内の観察は困難であり、抱卵を中止した理由は不明である。

(Ⅲ)

(1)個体番号:足環なし(2012年生まれ、オス) 及び No.150(2012年生まれ、メス)
(2)確認日:平成26年4月18日(金)
(3)場 所:新潟県佐渡市
(4)経 過:

このペアは、4月11日に抱卵開始を確認したペアである。
4月18日午前6時15分頃から8時10分頃にかけて、巣が空いた状態となり巣に戻る様子が確認できなかったことから、抱卵を中止したものと判断した。
なお、卵の殻の回収は本日時点で実施しておらず、巣内の観察は困難であり、抱卵を中止した理由は不明である。

【繁殖期のトキの観察について】
繁殖期はトキが最も敏感になる季節です。人が巣に近づくとトキが危険を感じて巣を放棄してしまうこともあります。また、 一時的に巣から離れたスキにカラスなどの天敵に卵を奪われてしまう可能性もあります。そのため、トキの子育てが成功することを願って、 ヒナが巣立つ6月ごろまで営巣地への接近などは控えてくださいますよう、ご協力をお願いします。