放鳥トキの営巣・抱卵状況について(5月15日発表)

 平成24年5月15日(火)環境省からの発表で、新潟県佐渡市において、抱卵中のトキのペア1組が巣を放棄したことが確認されました。また、一度抱卵を中止した別のペアが再営巣し、抱卵を開始しているのが確認されました。

現時点で営巣が確認されているトキのペアは引き続き8組であり、2組が育雛中、6組が抱卵中です。

以下、環境省からの発表です。

1.抱卵の中止について
(1)放鳥個体:(2006年生まれ、オス)及び(2008年生まれ、メス)
(2)確認日 :平成24年5月15日(火)
(3)営巣場所:新潟県佐渡市
(4)確認の経過:同ペアは、3月28日(水)に最初の営巣・抱卵を開始しているのを確認したペアで、4月6日(金)に巣を放棄しているのが確認されていた。
その後、4月18日(水)に、前回営巣した場所から150mほど離れた場所にあるアカマツで再営巣し、抱卵を開始しているのを確認していた。
5月15日(火)、午前4時50分からモニタリングチーム(環境省職員)が観察したところ、すでに巣に親鳥がいない状態になっていることを確認した。巣は小佐渡の山中にあり、巣の周辺の踏査の実施については、16日以降に実施する予定。
5月14日(月)13時05分には、抱卵を行っていたことが確認されており、巣を放棄した原因は不明である。

2.営巣・抱卵の確認について
(1)放鳥個体:(2009年生まれ、オス)及び(2010年生まれ、メス)
(2)確認日 :平成24年5月15日(火)
(3)営巣場所:新潟県佐渡市
(4)確認の経過:同ペアは、4月9日(月)に、平野に近い傾斜地の杉林の踏査によってスギの樹上で巣が確認され、その下で卵殻2個分が回収されていた。
5月15日(火)、オスに装着されたGPS送信機により得られた位置情報等を頼りに観察を行っていたところ、午前8時30分にオスが飛来し、斜面の広葉樹に作られた巣に座り込むのを確認した。8時30分までの少なくとも約1時間は、木に2羽でとまる様子などが確認されており、巣にトキがいなかったことが確認されているが、その後1時間以上にわたって抱卵の姿勢をとったことから、15日時点で、再営巣・抱卵を開始したものと判断した。今回の巣が、前回巣が確認された場所から、約1km離れた場所にある。なお、営巣・抱卵を開始した時期は不明である。

3.放鳥トキの繁殖に関する状況
(1)育雛中の個体

放鳥個体状 況

(2009年生まれ、オス)
(2010年生まれ、メス) 

3月16日に営巣を確認。同日卵殻を巣の下で回収。3月18日には抱卵を確認。
4月22日に巣の中にヒナ1羽を、23日以降は3羽を確認。
5月5日からインターネットのライブ中継を開始。
(2007年生まれ、オス)
(2009年生まれ、メス) 
4月2日に営巣を確認。4月5日に抱卵を開始しているのを確認。
5月5日に巣の中にヒナ1羽を、8日には2羽を確認。

(2)放卵中の個体

放鳥個体状 況
(2009年生まれ、オス)
(2007年生まれ、メス) 
3月27日営巣を確認。4月2日に抱卵を開始しているのを確認。
4月4日に一時的に抱卵を中断したが、同日中に抱卵を再開。
(2008年生まれ、オス)
(2008年生まれ、メス) 
4月9日に営巣を確認。4月12日に抱卵を確認。
(2009年生まれ、オス)
(2010年生まれ、メス) 
3月22日に営巣を確認。4月5日に巣の下で卵の殻4個分を回収。
4月24日に再営巣・抱卵を確認。
(2009年生まれ、オス)
(2009年生まれ、メス) 
3月12日に営巣を確認、3月17日に抱卵を確認。
3月25日に抱卵を中止し、4月30日に再営巣・抱卵を確認。
(2006年生まれ、オス)
(2005年生まれ、メス) 
それぞれが別の相手と営巣し、抱卵を中止した後、
5月13日に再営巣・抱卵を確認。
(2009年生まれ、オス)
(2010年生まれ、メス) 
4月9日に巣を確認。巣の下で卵の殻2個分を回収した。
5月15日に再営巣・抱卵を確認。

(3)営巣・放卵を中止した個体

放鳥個体状 況
(2009年生まれ、オス)
(2010年生まれ、メス) 
3月19日営巣を確認。3月24日に抱卵を確認したが、
4月4日に抱卵を中止し、卵の殻4個分を回収。
(2006年生まれ、オス)
(2008年生まれ、メス) 
3月23日営巣を確認。同日小型カメラを設置。
4月2日に抱卵を確認し、4月5日に抱卵を中止した。
4月20日に巣の下で卵の殻1個分を回収した。
5月13日までにオスがNo.03とペアを形成したことにより、ペア解消。
(2009年生まれ、オス)
(2010年生まれ、メス) 
4月12日に営巣・抱卵を確認。4月20日・21日にトビが来て一時抱卵した。
24日に抱卵を中止し、巣の下で卵の殻2個分を回収した。
(2006年生まれ、オス)
(2005年生まれ、メス) 
3月22日営巣を確認。3月26日に抱卵を開始しているのを確認。
4月25日に抱卵を中止し、巣の下で卵の殻3個分を回収した。
5月13日までにメスがNo.11とペアを形成したことにより、ペア解消。
(2008年生まれ、オス)
(2010年生まれ、メス) 
4月20日に営巣・抱卵を確認。4月30日に抱卵を中止した。

(2007年生まれ、オス)
(2006年生まれ、メス) 

4月6日に営巣・抱卵を確認したが、7日にカラスに卵1つを奪われ、
8日には2個目と思われる産卵を確認。
5月3日に抱卵を中止した。

(2010年生まれ、オス)
(2009年生まれ、メス) 
4月12日に営巣・抱卵を確認。5月9日に割れた卵を捨てるのを確認。
5月10日に抱卵を中止し、巣の下で卵の殻4個分を回収した。
(2006年生まれ、オス)
(2008年生まれ、メス) 
3月28日に営巣・抱卵を確認、4月6日に抱卵中止を確認。
4月18日に今季2度目の営巣・抱卵を確認したが、5月15日に抱卵を中止した。

(4)今後営巣する可能性のある個体

放鳥個体状 況
(2010年生まれ、オス)
(2010年生まれ、メス) 
枝運び・擬交尾が確認されている。
(2009年生まれ、オス)
(2009年生まれ、メス) 
4月17日に2羽が頻繁に行動している林内で卵の殻1つを回収した。
巣は確認されなかったことから、実際に巣を作っていたのかは明らかではない。

【繁殖期のトキの観察について】
 繁殖期はトキが最も敏感になる季節です。人が巣に近づくとトキが危険を感じて巣を放棄してしまうこともあります。また、 一時的に巣から離れたスキにカラスなどの天敵に卵を奪われてしまう可能性もあります。そのため、トキの子育てが成功することを願って、 ヒナが巣立つ6月ごろまで営巣地への接近などは控えてくださいますよう、ご協力をお願いします。