トキの野生復帰連絡協議会のH20年活動状況は以下の通りです。
H20 地球環境基金助成事業
「トキ野生復帰を支える地域社会モニタリング手法の構築」
実施額:6,000,000円
■ 助成活動の概要 ■
1.活動の背景と目的
佐渡島におけるトキの野生復帰プロジェクトは、H12年スタートした。当プロジェクトでは、
自然環境の調査と並行して地域社会の調査を行ないトキの野生復帰のための環境創造を目的とし、
H15年トキの野生復帰のための環境再生ビジョン(H27年時点で自然下でトキ60羽の定着)が生まれた。
このビジョン実現のため、各主体は、トキと共生するためのそれぞれの個別方針を策定し取り組みを開始し、H20現在、環境保全型の水田、
冬水田、ビオトープ面積は、小佐渡東部地域において年々面積を広げ、餌場の維持管理を行う地域団体も増加している。又、
餌場における餌生物の高度化の取り組みもH18年スタートし餌場面積の拡大と共に餌密度の拡大も徐々に進められている。
これらの取る組みの一層の拡大とともに、取り組みの成果を、客観的に検証するしくみも、H27年の目標達成のために必要である。
この拡大と評価を目的に、地域社会モニタリング手法の構築を行う。
2.活動の概要
トキの試験放鳥の前・後に、生態学的調査、社会学的調査、社会的合意形成を放鳥エリア一帯において行うことで、
地域社会が積極的に参加して行う「地域社会モニタリング手法」を開発する。この手法の導入により、トキとの共生を国や自治体、
専門家だけが検証するのではなく、汗を流し餌場等を現場で創出している地域住民自身が行うことで、
トキと共生した地域社会づくりを具現化する。
2年度目の本年は、地域社会モニタリング制度を構築し、試験放鳥による検証を行うとともに、新たな地区での地域計画の策定を行った。
この事業を通じて、トキの試験放鳥の意味であるトキの野生への放鳥を通じて、トキが生息できるか否か、
小佐渡東部における自然環境の総チェックを放鳥したトキの行動を検証する。
この方法を地域社会モニタリングと位置づけ、専門家による生態学的な採餌行動等の調査と連携した地域社会が参加したモニタリングを行った。
(放鳥トキが広域に分散したため、全体のマッチングは行えなかった。)
3.活動の結果と効果
平成15年環境省トキの野生復帰ビジョンに基づき、エサ場整備と地域社会モニタリング手法の構築に努めてきたが、
H20年9月放鳥したトキ10羽は、放鳥後2週間で、当初予定の10キロ四方のエリアを離れ、小佐渡中部、南部、国仲平野から、最近では、
新潟県、長野県、山形県、福島県、宮城県でトキの飛翔が確認されるなど予想外の展開となった。このトキの飛翔能力は、
専門家の予想を遙かに超えており、当初、佐渡島から本土への飛翔は困難という見方から、
H27年に小佐渡東部に野生のトキ60羽の定着をめざす、トキの野生復帰ビジョンが生まれたが、トキの行動は、
根本的に異なる行動を示している。当会でも、エサ場、及び、地域社会モニタリングの準備を環境省ビジョンに合わせ実施したため、
モニタリング対象であったエサ場とトキの飛翔行動に根本的な差異が生じ、検証を行うことが困難となった。現在、
これまでの取り組みとモニタリング手法の修正を含め、日々、分散していくトキの野生復帰の取り組みに関する再検討を行っているところである。
H20 農村環境整備センター(餌生物高度化調査研究)
実施額:1,240,000円
エサ生物の高度化に関する検討を添付の通り行った。
(実施成果部分の抜粋 )
エサ生物高度化調査の成果
(1)イトミミズ・ユスリカ一斉調査 データからの検証
一斉調査とその後の検討会議により、以下のようなことが分かった。
・春施肥より秋施肥のほうがユスリカ・イトミミズが多い。
・久知河内A②はイトミミズ・ユスリカはBより少なかったが、主生物量(特にアカガエルのオタマ・仔ガエル)が大変多かった。
・山付きのビオトープでイトミミズ・ユスリカが多く山から離れるほど減少する(野浦など)
・有機物の施肥を行ったほうがイトミミズ・ユスリカが増える
・耕作田では、
秋代+冬期湛水でイトミミズ・ユスリカが増える
農協堆肥でなく鶏糞や油粕などの素材による自家混合肥料を使ったほうが増える
通年湛水であれば減減よりは完全無無のほうがイトミミズ・ユスリカが増える。
・乾燥するとイトミミズユスリカは皆無になる
・かつてトキ餌場だったところは、一時期慣行栽培をしていても、イトミミズ・ユスリカが多い(岩首 観音堂)
調査結果の詳細は次ページ以降に掲載した。
表中の記号の凡例は以下の通り。
(2)イトミミズ・ユスリカ一斉調査のまとめと成果
【成果1】 情報の共有
・田んぼの生き物調査によって、同じように見えるビオトープ(水田)でも、基底生物(イトミミズ、ユスリカ等)
の生息量は大きく異なっており、条件面でちがいがあることが理解、共有できた。
・有機農業や生きものにやさしい水田稲作で現在行われている、「田んぼの生き物調査」の技法を学び、
トキの野生復帰を軸とした生物多様性を考える上で、また、
ビオトープでの生きものの多様性を確立する上での技法として有益であることを共有できた。
・田んぼの生きものやビオトープの生きものについては、ドジョウやメダカ、オタマジャクシやカエル、
タニシなどの目につきやすいものだけでなく、泥の中にいるイトミミズやユスリカなどがいること、
その小さな生きものたちが果たす役割が大きいこと、より小さな生きものの目線に立ってビオトープ作りなどを考えるための「目線の共有」
をすることができた。
【成果2】 ビオトープの方向性(イトミミズ、ユスリカの視点から)
・トキの野生復帰を軸としたエサ生物量を増やすためのビオトープ(水田)にするためには、永年無施肥の自然に近い状態よりも、「秋」「薄め
(反20kg以下)」の「有機資材(米ぬか、牛糞、鶏糞、醤油かす等)」を入れた方が効果的であることが明らかになりつつある。
・「秋」に対して、「春」に入れると、有機資材が急速に分解(発酵、腐敗)し、根腐れ、ガスの発生等、
微生物などに対して悪影響を及ぼしやすい。秋であれば、ゆっくりと分解する。佐渡のように雪が積もるのであれば、脱窒の影響は少ない。
冬期湛水であればなおよい。
・反20kg以上をビオトープに投入すると、水田稲作とちがい、ビオトープからの除去分(収穫物)がないため、過剰投入になりやすい。
ビオトープでは、春先に生物が増えるためのきっかけとしての有機物等があればいいと考える。
・トキの野生復帰を軸とした理想のビオトープ(水田)は、年中水が絶えることのない湧水の湿田で、冬でも凍らず、
山付きで落ち葉などがビオトープに自然と入るような状況があることである。この場合、イトミミズ、ユスリカも増え、条件が整えばドジョウ、
メダカなども多くなり、エサ生物も増えると考えられる。
・水田稲作の場合でも、秋に元肥となる有機質を投入し、秋代かき、冬水田んぼ(冬期湛水)
とすることで春以降の生物量の増大と生物多様性に寄与できる。水田稲作であっても、春先の元肥となる有機質肥料大量投入は過発酵(腐敗)
などの原因となり、根腐れ等の障害を起こしかねない。
・ビオトープ(水田)、稲作水田ともに、水が枯れる、あるいは、中干し等で干し上げる時期があると、イトミミズ、
ユスリカ等の生物は極端に少なくなる。
【成果3】 各地でのこれからの取り組み
・田んぼの生き物調査技法を、ビオトープに応用し、自主的にビオトープの方向性を検証できる。
・秋、薄めに有機資材投入などの成果を取り入れたビオトープの設計、改善、検証ができる。
・田んぼの生き物調査を、ビオトープ作りなどボランティア受け入れの体験メニューのひとつとして指導できる。
・イトミミズ、ユスリカなどの視点で、地域のビオトープ、稲作などを考えるきっかけになる。
5.総合考察
今後のテーマ等として下記が上げられる。
・トキの野生復帰の視点では、ビオトープなどのエサ場に近接する山付きの場所では、トキが飛び立て、
安心できるようある程度の見晴らしが必要とされる。一方、生物多様性の視点から、
ビオトープなどには山付きで落ち葉が直接落ちるような環境条件も望ましいと考えられる。この点のバランスがとれたランドスケープ
(森林整備等)を行う必要がある。その検証も必要になる。
・上記の点では、ビオトープ、水田などの山付きの状態で、様々なランドスケープを用意し、トキが望む形を提示することも検討できる。
その際には、農家の視点、生産の視点、基底となる生きものの視点も必要である。
・ビオトープ(水田)での生物量増大の方向性である、秋に薄めに有機資材投入であるが、その際に、代かきのようなかく乱をした方がよいのか、
代かきをせずに投入するだけでよいのかについての検証は今後の課題である。
・ドジョウやカエルなどのトキにとってのエサ生物量と、イトミミズ、ユスリカなどの基底となる生物量の相関関係を定量化、
検証することは今後の課題である。
・山付きの水田と同様に、秋になって落葉期にビオトープ(水田)に落ち葉を大量投入して条件が変わるかどうかの検証も今後の課題となる。
最後に、今回の研修を通じ、自分たちそれぞれの地域のビオトープの現状が分かっただけでなくl、 比較することによって各ビオトープの課題や方向性も見えてきた。共同での研修会は、視点や認識、 課題の共有をする上で大きな成果を上げることができた。
H20 イオン環境財団(森林整備)
両津東部森林組合、南佐渡森林組合、地区住民等と連携し以下の整備作業を行った。
実施額:2,000,000円
生椿地区 沢沿いの林の手入れ
立間地区 沢沿いの林の手入れ
野浦地区の林の整備 田んぼの周辺の里山林の手入れ
立間地区 トキの観察小屋周辺の林の整備と観察小屋の改修
佐渡のトキは、平成20年9月25日、小佐渡東部正明寺地区で試験放鳥が開始されました。トキの野生復帰連絡協議会では、
平成12年より開始した環境省トキの野生復帰プロジェクトと協働して、エサ場づくりを実施し、小佐渡東部で35カ所、
35ヘクタールまで拡大しましたが、各ビオトープの外縁の森林は放置されたままであるため、森林組合と協働で、下草刈り、
間伐作業を行いトキが営巣できるような明るい森づくりをめざしています。
試験放鳥されたトキは、小佐渡東部地区から、小佐渡中部、小佐渡南部地区、新潟本土、長野県、山形県、宮城県まで、広がり、現在は、
佐渡に4羽、新潟県本土に2羽、山形県に1羽分散しています。このような状況の中、環境省の小佐渡東部地区への60羽の定着を目標に、
本年度も小佐渡東部を中心に、一部、小佐渡南部地区(羽茂地区)の保全を行いました。
野浦地区
野浦地区は、地区内の水田の半分以上が、環境保全型の水田になりました。この水田の周辺の林の全ての管理を行うことは、困難ですが、
かつてトキが飛来していた象徴的な場所2箇所とその2箇所を結ぶ沢の整備を行いました。特に、
ビオトープと周辺の林の整備指針を示すための重要モデルとなるような、
管理作業を森林組合による伐採と集落ボランティアによる片づけという形で行いました。
立間地区
かつて、トキの観察を行ったことのある唯一の観察小屋が、小佐渡東部の山中にあります。立間地区の観察小屋です。
すでに林の覆われていた観察小屋の周辺整備をしたところ、風に煽られ、観察小屋が崩壊してしまいました。
このため観察小屋周辺の林の整備とともに、観察小屋の補修を行い、トキの試験放鳥に備えました。実施は、元両津森林組合の北野氏と集落、
学生ボランティアとの協働作業です。
生椿地区
生椿地区は、かつてのトキの生息地として象徴的な山の中の拠点です。既に、ビオトープは、生椿の水田の大半の整備が終了しました。
この生椿を全体のモデルにするために、生椿集落の林の整備は、河畔林を中心に全体の整備を行いました。この結果、明るい林と、
幾重にも連なるビオトープ水田の整備が完了しました。実施は、両津東部森林組合と旧生椿地区住民及び、
トキボランティアの力を借りて行いました。
小 佐渡南部地 域羽茂地区
これまで、エサ場整備等を組織的には行ってこなかった南佐渡地域では、
トキの野生復帰連絡協議会メンバーが個人的に維持管理してきたビオトープ及び水田があります。
この水田を拠点に、トキが飛来したことから、当初の予定の範囲を超えますが、小佐渡南部羽茂地区において、南佐渡森林組合の力を借りて、
ねぐらの整備をめざした竹林の駆逐と林の整備作業を行いました。この作業は、
本年開始したばかりのために次年度以降も継続的に実施する予定です。
H20 サントリー世界愛鳥基金
実施額:2,000,000円
トキ野生復帰パンフレット「トキと共にまもる自然」を制作し25,000部の印刷を緒個なった。(冊子が必要な方は、
トキ交流会館にて頒布しています。以下は表紙と28-31pのみ抜粋し掲載)







