9.神奈川県秦野市における身近な生き物の里づくり
(環境省里地里山保全再生モデル事業による取り組み事例)
【生き物の里と管理方針】
神奈川県秦野市では、平成15年より「生き物の里」認定制度を設け、自治会が行う草刈り等の管理作業に対して補助を出している。
平成19年度までの認定数は、3ヵ所だが数年後には、10ヵ所程度まで増やし「市民が生き物と触れ合える潤いのある地域づくり」(秦野市)
をめざしている。
この生き物の里の第1号は、秦野市上地区にある「柳川生き物の里」だが、管理を行っている地区組織から以下のような相談があった。
「柳川生き物の里は、かつての水田と沼の土地で、水田耕作を行おうとしても沼地で深く、機械が入らない。
耕作者の高齢化もあり耕作を止めてから数年が経っている。生き物の里として認定したのは良いが、
どのように管理することが生き物にとって良い方法かわからない」と、管理方法の適切な指導が求められた。
【専門家のアドバイス】
そこで、水田と湿地の管理方針の専門家として、守山弘先生をお呼びして、現地研修会を開催した。上地区の地形、竹林と雑木林、水源と水路、
水田の配置を確認した後、守山先生は、地元の長老達に水源の位置と水量、水源の深さ、当時の水の活用の仕方、水路と水田の位置、
水路から水田へと水を入れる取水口の位置を質問した。そして、以下のアドバイスを行っている。
「長老達の語った通りの環境を取り戻すことが、この場所の生物多様性を一番高めることです。しかし、全てを昔と同じにすることは困難だろうから、
まず、水源から復旧し、水路、温水溜池、水田という順番で、上流から順次整備していけば、数年後には、立派な原風景がもどってくるでしょう。
何よりも大事なことは、長老達の智恵と技術がこの場所の一番の管理方法だから、長老達を指導者として、生き物の里の整備を行ってください」
というものである。その翌月から、生き物の里の再整備が始まり、。地元長老達の指導で、茂りすぎた竹林の整理と水源の復元、水路の掘り込み、
温水溜池づくり、そして水田の復元作業が行われている
【管理技術と智恵】
柳川生き物の里で行った生き物の里の整備方針は、かつての農家が代々継承してきた里山、溜池、水路、水田の管理技術である。土水路の堅めには、
セキショウを植え、鉄分の多い赤い水に対しては、枝葉を入れるなど、現地で調達可能な植物などを活用した伝統的な管理方法である。
このように、里地里山の生物多様性の復元では、機械化などが導入される以前の生活の智恵や農林業等の管理技術を確認し、
整備や保全に生かすことが有効である。

