3.多様な主体が連携した現地調査と計画づくり
佐渡島における地域社会づくりの基本方針は、前記の調査事業を通して、環境省により平成15年3月以下の方針(トキ野生復帰ビジョン)
をとりまとめた。
【トキの野生復帰方針】
【目標】トキと共生する地域社会をつくる
(1)自然と人が共生できる地域社会をつくる
(2)現世代と次世代が共生できる地域社会をつくる
(3)都市生活者と佐渡島民が共生できる地域社会をつくる
目標達成のため以下の事業を各主体が、それぞれの立場で行う。
・生物多様性の回復、水田・水路・森林・里山の整備
・海・山・里の資源の活用、環境保全型産業の創出
・地域文化の保全・継承
・都市生活者との交流
個別活動を調整し牽引するため、トキを軸とした島づくり協議会を設置する。また、
各主体間の協働と調整のため10個のしくみの創造に努める。
【協働を創造する10のしくみ】
1.トキを軸とした島づくりに関する情報の集約と発信事業(情報センター機能)
2.トキ博士をめざす資格制度、環境教育プログラムの開発事業(社会教育)
3.トキを軸とした総合的な学習の時間の支援(学校教育)
4.地域社会活性化のための研究旅行の誘致と連携(大学)
5.餌場環境・営巣環境整備のためのボランティア計画の立案と実践(ビオトープづくり・森林整備)
6.トキと人に優しい環境保全型農業との連携活動(農業)
7.トキを軸とした地場産品の開発と販売支援事業(産品)
8.トキツーリズム計画立案と旅行業者との連携活動(観光)
9.トキ基金の普及と運営窓口の設置
10.全国レベルの情報交流のための先進地交流会議「自然共生サミット(仮称)」の企画と実施
【トキの野生復帰連絡協議会の設置】
トキ野生復帰ビジョンの策定から1年後、里地ネットワークでは、当時の佐渡トキ保護センター長、
高野毅氏と連名でトキの野生復帰連絡協議会の設置を呼びかけ、第2ステップで活動を開始した地区の自治組織や活動組織、
市民活動団体や関係する諸団体が参加し、行政機関等をオブザーバーとして定期的な協議会を開始した。その後、
協議会のよびかけにより活動を開始した団体、地域団体等も参加している。協議会では、各主体の活動との連携をとり、
佐渡トキ保護センターと佐渡市のトキに関する情報をもとに、各主体が実施可能な餌場整備活動の促進、大学、企業との連携、助成制度の活用など、
情報の共有と協働のしくみづくりを行った。
4. 餌場創出活動と活動団体の育成
【自治組織へのトキ野生復帰活動説明会(トキのスライドショウ)】
協議会では、新たな活動を地域社会に呼びかける方策の一つとして、各地区の公民館等で、
地区および周辺地区住民を対象にトキの野生復帰活動説明会と懇談会を開催し、誘引活動を行ってきた。説明会では、トキの野生復帰に関わる情報を、
トキの生態、トキ野生復帰の計画、餌場やねぐらの必要量と現況、これまでの近隣地区での活動概要等を画像付きのスライドショウで紹介した。
この説明会の特徴は、主催者構成にあり、佐渡市、佐渡トキ保護センター、新潟大学、協議会が連携して実施することで、
地区からのさまざまな質問に対して、それぞれの立場からの回答と対応を行うことができる点にある。行政にできないこと、大学にできないこと、
協議会にできないことを相互に共有しながら、補完しあうことで、地域社会からの信頼を得ることができる。この説明会により豊岡、立間、赤玉、
東立島、東強清水、上瓜生屋等の新たな地区で餌場整備活動等が始まっている。
【小中学校等によ る保全活動】
佐渡島内の小中学校では、小佐渡東部および旧新穂村地区の小中学校を中心に、ビオトープづくりやトキの餌場づくり、
生きもの調査などを通じた保全活動や普及啓発活動を行い、児童生徒から保護者や地域にも影響を与えている。
平成17年本格的にスタートした小中学校の修学旅行等による餌場整備活動は、主に小学校の修学旅行による参加が増え、
ビオトープの面積も増加している。来島した児童達は、トキ交流会館でトキの講話を聞き、交流会館備え付けの長靴に履き替え、クワとスコップ、
生き物調査用のタマアミをもって、耕作放棄された水田へと向かう。作業時間は、児童の体力を考え90分以内とし、ビオトープを完成させ、
生き物調査を行い、会館へ戻る。この一連の作業は、
交流会館がある潟上地区の農業者らが中心となった地区活動団体潟上水辺の会が運営している体験学習である。このほか、トキ交流会館が窓口となり、
高校生、大学生らをグループで受け入れ、地区の保全活動へのボランティア紹介などを通じて、保全活動を拡大している。
【餌場マップによる普及啓発】
以上のような各主体の活動の結果をとりまとめ、協議会で平成17年に「小佐渡東部におけるトキの餌場マップ」を作成した。
それぞれの餌場整備地は、地域社会や活動団体の主体的な活動により支えられており、その後のモニタリングマップづくりにつながっていく。
餌場マップを通じて、新たな保全活動の必要エリアも明らかになり、平成17年当時の餌場のなかった地区でも、その後地区団体が作られ、
取り組みが開始されている事例が増えている。





