トキはこんな鳥です

 トキの分類

  • ペリカン目トキ科トキ属
  • 和名 トキ
  • 英名 Japanese Crested Ibis
  • 学名 Nipponia nippon

大きくて美しい羽の鳥

 トキが体をまっすぐにのばした時、くちばしの先から尾羽の先までは約75cm、羽を広げると約140cmにもなる大きな鳥です。ペリカンの仲間で全身はまっ白ですが、羽を広げると「トキ色」という美しいうす赤色をしています。顔は赤く、長くて黒いくちばしでドジョウ、タニシ、カエル、サワガニ、バッタなどを食べます。エサは田んぼや畦などで探し、近くの森でねぐらをとります。

 

仲のよいカップル

 トキは、見通しのよい高い木の上に巣をつくります。オスとメスは1羽ずつでカップルになり、くちばしを使って羽づくろいをしたり小枝を渡したりするなど、とても仲良しです。卵は4月上旬から産みます。カップルで卵を温め、約28日でヒナがかえります。親鳥は、その後40日から50日ほど世話をします。ヒナは巣立ってから2~3年ほどで大人になり卵を産むようになります。

ユウユウとメイメイの小枝渡し

ユウユウとメイメイの小枝渡し

 

トキは人里の近くにいた

 トキは、むかし日本中の里山にいました。トキは人が暮らしている里山が大好きです。田んぼや畑では米や野菜がつくられ、雑木林は木材や薪(まき)をとるために手入れをされていました。そのように人が守り育ててきた里山は、トキのエサがたっぷりあって、ねぐらもつくりやすかったからです。でも、トキは、エサを探すときに田んぼの稲をふみつけることもあり、「害鳥」でもありました。

 

トキが日本からいなくなった日

 明治時代になって、美しい羽をねらっての狩猟がさかんになり、トキは乱獲されてしまいました。その後、日本は工業化が進み、田んぼが減ったり自然破壊や農薬などの環境汚染もあったりして、どんどん数を減らしていきました。最後までトキが暮らしていたのは、石川県能登半島と新潟県佐渡島だけとなり、トキを絶滅から救うために1981年に佐渡にいた最後の5羽を捕獲し保護したため、日本の空からトキの姿は消えてしまいました。

 

世界のトキ

中国のトキ地図

 かつて、トキは日本・ロシア・朝鮮半島・中国に生息していました。しかし19世紀以降、日本と同様に各地のトキの数は減り、20世紀の半ばには絶滅したと考えられていました。ところが、中国の陝西省洋県で1980年代に再発見され保護されています。

 

トキの名前

 トキは漢字で「朱鷺」と書きます。朱(赤色)の鷺(サギ)という意味ですが、サギとは別の種類の鳥です。学名は、ニッポニアニッポン(Nipponia nippon)と付けられました。江戸時代の終わりごろに日本に来たドイツ人医師の学者シーボルトが、トキやニホンオオカミなどの標本をオランダのライデン博物館に送りました。そして、日本のシンボルのような鳥だとして命名されました。ちなみに英語では、ジャパニーズ・クレステッド・アイビス(Japanese Crested ibis)といいます。これは、「日本の冠羽のある」トキという意味です。

 

日本のトキの野生復帰までの道のり

  • トキ保護センターとキンちゃん

 1967年、新穂村清水平にトキ保護センターができました。ここでは、野生のトキを保護し増やすための研究が続けられました。当時のトキ保護センターでは高野高治さんなど多くの人による協力が得られていましたが、トキは1羽また1羽と死んでしまい、子どもは生まれませんでした。そして、1985年から中国に生息していたトキを借りて、ペアリング(つがいづくり)もしましたが、うまくいきませんでした。1993年、今の佐渡トキ保護センターができました。1995年にはオスのミドリが死に、日本の野生生まれのトキは、おばあちゃんのキンだけになってしまいました。

  • 中国でのトキの発見

 1981年に中国でみつかったトキは、日本のトキと同じ種類でした。日本のトキと中国のトキの遺伝子は99.935%も一緒で、ちがうのはほんの0.065%。まったく同じ種類だと確認されています。

  • 中国の成功と日本で増えはじめたトキ

 1992年、中国でトキの人工ふ化が成功します。中国の野生トキを守る活動は日本の協力もあって広がり、中国の野生トキは少しずつ数を増やしはじめました。1998年、日本と中国の友好のしるしとして、中国政府から日本に、トキのつがい(オスとメス)のヨウヨウとヤンヤンが贈られました。このつがいから1999年に最初のトキがふ化します。その後は、毎年、卵がかえりました。中国から別のトキを借りたり、日本で生まれたトキを中国に送り返したりして、日本と中国が協力してトキが増えていくように協力し合っています。

  • キンちゃんの死とトキの夢

 2003年10月10日の早朝、36歳(人間でいえば100歳)のキンちゃんは、住んでいた部屋で空を飛ぶように最後のはばたきをみせたあと死にました。そのとき、佐渡トキ保護センターにいるトキは、36羽になっていました。わずか5年前は、キンちゃん1羽だけでした。キンちゃんは、トキが空に帰る日を今も見守っています。

  • 計画づくり

 佐渡トキ保護センターでトキが増えはじめたため、トキをもういちど空に飛ばすことを真剣に考えはじめました。かつてトキは野生のなかで数を減らしていきました。もし、今、トキを空に放しても、きっとほとんどのトキは死んでしまうでしょう。トキが安心して暮らせるようにしなければいけません。これはとても難しいことです。
 
1999年から、環境省が新潟県や佐渡の人たちといっしょに、「野生復帰ビジョン」というトキを野生に返すための計画をつくりました。この計画では、2015年頃には60羽のトキが自然の中で生きていけるようにすることを目標にしています。今、この計画に沿って、いろんな人たちががんばっています。
 
佐渡の小学校では、学校ビオトープなどでトキのエサ場づくりをしています。農家は田んぼで農薬を減らす工夫をしたり、大学の研究者は森を守る研究をしています。佐渡島のあちこちで、子どもからお年寄りまで集まって、トキと一緒に暮らすためどうしたらいいのか、話し合い、活動をしはじめました。

  • 自然に帰るために必要なこと

 トキが自然の中で暮らすためには、自分でエサを探したり、卵をねらう動物やきびしい自然とたたかわなければなりません。自然の中でトキが生きのびるためには、訓練が必要です。2007年、トキが自然に慣れるための訓練をする施設「野生復帰ステーション」が、新穂正明寺地区に完成しました。この施設で、トキは自分で巣を作り、エサを食べ、子育てをして生き抜くための練習をつんでから、自然下にはなされます。

  • 再び人のくらす自然へ

 2008年9月、野生復帰ステーションで訓練をつんだ10羽のトキが、佐渡の自然に放たれました。人々の暮らす自然にトキが戻ったのは、日本にトキがいなくなってから27年ぶりのことです。これからも、野生のトキと人が共に暮らすために、自然や地域社会のあり方を考えていくことが必要です。野生のトキと共に、佐渡の自然や暮らしをもっと良くしていこうと取り組んでいます。

  • 野生復帰から10年

 2018年、トキが野生で暮らすようになってから10年が経ちました。トキの個体数が増え、最近になってようやく「里山の鳥」として身近に感じることができるようになってきました。これも地元の人々がトキと共に末永く暮らしていけるようにと努力し、トキとの信頼関係を築いてきた成果です。大空に羽ばたくトキが、佐渡だけでなく、昔のようにまた日本各地で見ることができることを楽しみにしています。

 

野生順化施設 鳥瞰図

 

国際保護鳥 トキ

分 類  ペリカン目 トキ科 トキ属
体 長  約76cm
翼開長  約130cm
体 重   雄 1.8kg~2.0kg
 雌 1.4kg~1.6kg