■ 報告 「生きものと人・共生の里」を考えるシンポジウム

2007年10月13日(土)佐渡市・金井能楽堂で「生きものと人・共生の里」を考えるシンポジウムが開催されました。
このシンポジウムは、昨年度、ツルの里・山口県周南市で開催され、今回が2回目です。コウノトリの兵庫県豊岡市、ツルの鹿児島県出水市、
トキの佐渡市に、関係する省庁や県、保護団体などが実行委員会を開いて開催しています。今回は、新潟県で開催することから、
新潟市や阿賀野市からも報告がありました。
会場には、383人の方が集まり、能楽堂は立ち見が出るほどで、「生きものと人との共生」について関心が高まっていることを実感しました。
シンポジウムの内容をまとめました。
シンポジウムは、佐渡を拠点とし世界各地で演奏活動をおこなう篠笛奏者・狩野泰一さんによる篠笛の演奏で開幕し、
佐渡市立行谷小学校を代表して6年生3名による「トキに関する学習」の取り組みの発表が行われました。
また、基調講演として、写真家の今森光彦さんが、アトリエのある琵琶湖のほとりで撮影した写真を紹介しながら、日本の里山について
「30カ国以上旅をしましたが、田園があり、小さな森が機能し、いつも湿潤である日本の里山のような風景に出会ったことはありません。
今はほとんどなくなり、なつかしいと言われてしまう里山の風景を、若い人たちはこれから未来の風景と思ってつくっていってほしい」
と語っていました。

基調報 告は、参加した新潟県佐渡市、新潟市、阿賀野市、鹿児島県出水市、兵庫県豊岡市、山口県周南市から、それぞれ、市長や副市長、
教育長がスライドを交えながら、取り組みや今後の課題について報告しました。
新潟県には、トキの野生復帰を目指す佐渡だけでなく、新潟市には、日本一オオヒシクイが飛来する「福島潟」、日本一コハクチョウが飛来する
「鳥屋野潟(とやのがた)」、そしてラムサール条約湿地の「佐潟」があり、それぞれ保全のための活動が続けられています。また、
阿賀野市は瓢湖(ひょうこ)のハクチョウで有名ですが、これは、故・
吉川重三郎さんのハクチョウに対する献身的な保護活動からはじまったもので、その精神が現在まで受け継がれ、
ハクチョウへの給餌やエサの提供などはすべてボランティアで行われています。
近年毎年1万羽を越えるツルが飛来する鹿児島県出水市では、ツルが飛来する冬の間、地権者から田んぼを借りて保護区とし、
人の立ち入りを禁止します。保護区設置と給餌は農作物への被害を防ぐためで、保護と共生についての取り組みのひとつの形となっています。
トキの野生復帰の先輩となる兵庫県豊岡市からは、最新の報告が行われ、環境の取り組みと、経済活動が両立し高まりあっていく
「豊岡市環境経済戦略」についての説明がありました。
山口県周南市は本州唯一のツルの飛来地です。周南市のツル保護の活動は江戸時代に始まり、
NPOや地元中心に行われてきたことが大きな特徴です。出水市の協力を得て出水市からツルの移送・放鳥をはじめており、
ツルの行動調査方法などの報告がありました。

(各市代表)
この基調報告をふまえて、トキの野生復帰にも深く関わる方々によるパネルディスカッションが行われました。司会は、
日本野鳥の会自然保護室主任研究員の金井裕さんが行い、トキの野生復帰連絡協議会会長の高野毅さん、
トキの田んぼを守る会会長の斎藤真一郎さん、九州大学大学院工学研究院教授の島谷幸宏さんがパネリストとして発言しました。
トキ連の高野さんは、地域や活動団体が連携して情報共有や共同の活動を行っていることや、トキ交流会館を拠点に、
今年度2000人を超える子どもたちを受け入れているトキ学習などを紹介し、トキの野生復帰の活動は、人と生きものが共生する地域づくりや、
農業、観光産業のはずみとなると訴えました。
トキの田んぼを守る会会長で、農家の立場から斎藤さんは、農薬のいらない田んぼづくりや、田んぼの中に水を温め、生きものの避難所となる
「江」をつくる取り組み、冬の田んぼに水を張る「ふゆみずたんぼ」を紹介し、生きものの命の循環が健康な稲づくりや農業にもつながることや、
美しい景観として観光にもつながること、「生きもの調べ」など手間がかかり、農家に今のところ経済的な恩恵はなくても、
今後は農業技術として、これらを評価する必要があることを訴えました。
佐渡で「トキの野生復帰のための持続可能な自然再生計画の立案とその社会的手続き」を研究している島谷さんは、研究の特徴について、
「自然をどのように再生すればいいのかという自然系の研究といろんな立場、
いろんな関係の人がトキを受け入れる社会につくっていくにはどうしたらいいかという社会系の研究の両面から行っていることです。
自然再生は人の考えかたをふくめて再生を考えることが必要です。地域の今後を考えるのにもいい機会だと思います」と語りました。
その後、会場からは、豊岡のコウノトリが稲を踏まないか、農家はどう思っているのかといった質問(答え:
稲をよけて歩くためほとんど踏まないことと、その調査結果を説明して納得していただけている)などの具体的なやりとりがありました。また、
環境省、国土交通省、農水省、林野庁下越森林管理所、文化庁から、それぞれ関係する取り組みの紹介などが発表されました。

(パネルディスカッションのようす)
シンポジウムでは、最後に「生きものと人・共生の里」を考えるシンポジウム「佐渡宣言」が採択されました。
佐渡宣言(一部)「今日6つの市から報告された数々の取り組みから、
私たちが真剣に取り組めば生きものと人との共生が可能であることを改めて認識し、共通する方法と課題をまとめることができました。
私たちは会議の成果を同じ思いを共有するさらに多くの人と分かち合い、協同のネットワークを将来に渡って広めていくことを目指します。
各地域と情報や経験の交流をさらに推進し、協力して生きものと人・共生の里つくりにむけての行動を力づよく続けていくことを宣言します」
トキの野生復帰では、トキと人の共生が課題になっています。今回のシンポジウムを通して、 同じような気持ちで取り組んでいる市やそこに関わる人達が各地にいることを知り、心強くなりました。
