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■ 山と田んぼでくらすヤマアカガエル

春のはじめ、ヤマアカガエルの卵塊が田んぼや水辺に見られます。ヤマアカガエルはアマガエルより先に産卵を始める茶色のカエルです。 トキはエサとして食べます。ヤマアカガエルのことについて、久知河内地区「久知河内ホタルの会」の菊池茂雄さん、菊池秀夫さん、 生椿地区の農家で、トキの野生復帰連絡協議会会長の高野毅さんにお話を聞きました。久知河内地区と生椿地区は、山にある田んぼや休耕田で、 生きものを大切にするお米づくりと、水辺を中心にさまざまな生きものが暮らす“ビオトープ”をつくっています。
(聞き取り:佐渡トキファンクラブ)
 
ヤマアカガエル
(ヤマアカガエル)

春一番の卵塊
高野:佐渡では、ヤマアカガエルの卵塊が、春一番に見られるカエルの卵です。2月の終わり、 水を張った田んぼやビオトープにヤマアカガエルの卵塊を見つけます。これを見るとそろそろ田植えにむけた作業をせんなんなぁと感じます。

田んぼの中たくさんのヤマアカガエル卵塊
(水が張られた田んぼ。ヤマアカガエルの卵塊がたくさん)

産卵のときだけ水辺にやってくる
菊池茂雄:産卵は2月から5月くらいまで見られます。ヤマアカガエルは、普段は山で暮らしていて、 産卵のときだけ水辺に降りてきます。そのため、山と続いている田んぼやビオトープの方が卵塊がたくさんあります。
高野:平野の整備された田んぼにはヤマアカガエルの卵塊が少ないかもしれません。 三面張りの水路やアスファルト道路によって山と行き来できなかったり、稲刈りのために田んぼを乾燥させたあと、 4月ごろまで水を張らないままにしておくからです。水がなくては産卵できません。山の田んぼやビオトープは一年を通して水があります。

ヤマアカガエル卵塊
(産卵したては、だいたい手のひらサイズ)

一年中水を蓄える山の田んぼ
菊池秀夫:
山の田んぼは、ダムや貯水池がないので、雪と雨をうまく使って田んぼの水を枯らさないことが大事です。 水をからっぽにすると、お米を作る途中に水が足りなかったり、田んぼにヒビが入るなど、田んぼそのものが壊れます。だから、 段々になっている田んぼ一枚一枚に、一年じゅう水が行き渡るように管理します。冬のあいだも一週間おきくらいに山に登り、 雨や風などで壊れたところを直したり、水路の落ち葉や木の枝などを取り除いたりなど手入れを欠かしません。

生椿
(生椿地区の風景)

高野さんと菊池秀夫さん
(3月の天気のいい日、菊池秀夫さんが生椿の高野さんのところへ遊びに来ました)

田んぼはちょうどいい水加減
菊池茂雄:ヤマアカガエルが産卵する場所は、水深が深すぎず、水量が安定していて、水の流れは、ないか、 緩やかなところです。小川や江でも、浅くてよどみがあれば産卵します。
温かい水も好みます。畦近くは温かいのかたくさんの卵塊があります。中央にある卵塊も、風に吹かれて畦ぎわに集まったりします。
高野:山では、雪解けの水は冷たいので、田んぼの中に江(水路)をめぐらせて、水を温めます。 田んぼに入った水は日光でさらに温まり、その下の田んぼに流れます。
菊池秀夫:産卵を終えたヤマアカガエルは山に帰って落ち葉や土の下で休みます。ときどき、 田んぼのわきに積んでおいた土の中で休んでいる姿も見かけます。
高野:人々によって伝統的に受け継いできた田んぼづくりが、ヤマアカガエルなどの生きものにとって好条件の産卵場所になっているようです。

もうすぐふ化
(もうすぐふ化。卵塊はふくらんで、にごった色をしています)

お米づくりの作業とオタマジャクシの成長
高野:4月ごろは気温も高くなり卵塊の数はピークをむかえます。 昔は田んぼが真っ黒になるくらい卵塊があったものです。「ケロケロ」とカエルの鳴き声がせわしくなると、田んぼもいよいよ稲作の始まりです。
菊池秀雄:久知河内地区は4月15日のお祭りのあと、生椿地区は標高が高めなので、 4月の終わりから田んぼを耕します。水がなかった田んぼにも水が張られ、 ヤマアカガエルやほかのカエルたちも産卵のために訪れるようになります。

ヤマアカガエルとクロサンショウウオの卵塊
[ヤマアカガエルの卵塊(右)と、クロサンショウウオの卵塊(左)]

菊池茂雄:卵塊は、中の黒い核の部分がオタマジャクシの形になり、はじめ透明だった周りの部分は、 だんだん大きくなり、白くにごって崩れます。
高野:核が白いものを昔は「めっこ」と呼んでいました。これは成長しません。
菊池秀夫:立派なオタマジャクシぐらいの大きさになると、カラスなどが食べていくのを見かけます。
高野:6月下旬から7月上旬になると、稲の成長促進のため中干しをします。 まだ肺呼吸できないオタマジャクシは死んでしまうので、中干し時期の工夫が必要です。
菊池茂雄:久知河内の一部の田んぼでは、稲刈りのときも水を残して、 毎年ボランティアの人たちと泥だらけになって稲刈りをしています。水がたまったところでオタマジャクシが生きています。

畦際のオタマジャクシたち
(畦際に集まるオタマジャクシ)

ヤマアカガエルの産卵は、 変化を知る指標
高野:卵塊の数によって、今年の気温が低いとか周りの木々が茂って日当たりが悪いとか、 環境の変化を知る指標になります。田んぼの管理を上手にやってきたかどうかの証でもあります。うっかり水を切らせば、 ヤマアカガエルは卵を産めませんし、産んだ卵も乾燥してしまいます。久知河内と生椿地区の田んぼやビオトープでは、 ヤマアカガエルの卵塊数が年々増えています。

卵塊を数えて調査する茂雄さん
(久知河内で卵塊数を調査する菊池茂雄さん)

高野:春にヤマアカガエルの産卵が始まり、卵塊の数が増えると田んぼの作業も忙しくなります。 カエル、魚、虫たちなどさまざまな生きものが季節に合わせて順々に現れ、種類も数も増えていきます。それぞれがエサをとったり、産卵したり、 休憩したり、水浴びをしたりなど、人がつくる田んぼやビオトープと、まわりの環境を利用して生きています。

高野毅さんとビオトープ
(ここはたくさんの生きものが生まれる場所です。この環境をどうぞ見に来てください)

[ 掲載日 2009年04月10日 | 読みもの ▼ひとつ前へ戻る ▲ひとつ次へ進む ]