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■ トキ・メッセージ11 潟上水辺の会

トキ交流会館のトキ学習には毎年多くの人が体験に来ています。その中のコースのひとつ「トキのビオトープづくり体験学習」 は修学旅行生や子どもたちに人気です。作業の指導にあたるのはトキ交流会館の地元・潟上地区で組織している「潟上水辺の会」のみなさんです。 潟上水辺の会はトキ学習の受け入れのほかにも地域で活動を広げています。今回は潟上水辺の会・代表世話人の板垣徹さんにお話を聞きました。
(インタビュー・文責:トキファンクラブ事務局)

●潟上地区がトキ学習中心の地に
平成15年、潟上地区に、トキ交流会館が開館しました。人とトキがとともに豊かに暮らすための地域づくり・環境づくりの拠点です。 トキの野生復帰に向けた取り組みが広がりつつある時期で、佐渡以外の子ども達や大人にもトキを見るだけでなく、 野生復帰の活動に参加してもらい、環境への意識を深めようと、「トキ学習」が企画されました。トキ学習には団体や修学旅行生を対象にした 「お話を聞こうコース」と「体験学習コース」があります。お話を聞こうコースは、元佐渡トキ保護センター長の近辻宏帰さんや、 幼年時代トキとともに暮らしてきた農家の高野毅さんからトキのお話を聞きます。「体験学習コース」 はトキのエサ場となるビオトープをつくったり、水辺の生き物しらべをします。 この体験学習の作業指導を潟上の人でやらないかと依頼がありました。
はじめは泥に触ったりクワを使ったりする作業が、修学旅行の材料になるとは思えず、 子どもたちがトキのビオトープづくりに来るとは思えませんでした。それでも交流会館の地元であるし、受け入れてみようと、 地区の総会で呼びかけました。

カキツバタの咲くビオトープ
(カキツバタの咲くビオトープ)

●かつてはトキを一歩引いて見ていた地域
潟上地区は島内の他の地区に比べて、人も多く土地も広い大きいため、潟上地区全体がまとまって活動するのは難しいことです。一方、 潟上地区には昭和40年代にトキの飼育をしていた行谷小学校があり、佐渡島内でもトキが最後まで生息していた場所に近いです。しかし、 それまではトキの保護活動に関心があまりありませんでした。
体験学習を受け入れる前に、地区内で体験学習用のビオトープにする休耕田を下見しようと呼びかけました。 すると予想を超えて30人ほどが集まりました。地域の活動に関わってみたいと感じた人や、 体験学習受け入れに魅力を感じた人が実は地区内にたくさんいたのです。

●トキ学習は楽しい!
そこで、地区の44人ほどで「潟上水辺の会」を設立し、体験学習の受け入れを始めました。トキ交流会館近くの休耕田を使い、 潟上水辺の会が指導者になって子どもたちと一緒にビオトープをつくりました。草を取り、スコップや手を使ってあぜをつくります。 土と水をかき回すように踏み、水がたまるようになったら完成です。しばらくすると生きものがすみつくようになります。
あぜの作り方や、道具の使い方、泥の中に長靴が埋まったときなど潟上水辺の会がお手本を見せます。泥がついて泣きそうになっていた子も、 最後はみんなが泥だらけになって盛り上がったり、みんなで泥を投げ合って泥合戦を始める学校もありました。 子どもたちが喜ぶ姿を見てやってよかったと思いました。子どもたちのパワーに私たちも驚きました。 子どもたちもいい思い出になっていると思います。
体験学習を始めたころ、少人数でたっぷりと時間をとれた学校がありました。川をゆっくりと下りながら生きもの調査をして、 原っぱで一緒にご飯を食べました。子どもたちと悠々とした時間を自然の中で過ごすことは本当にいいなあと実感したひとときです。

トキ学習ビオトープづくり
(みんなで畝づくり)

トキ交流会館でのトキ学習は平成20年で5年目になります。来てくれる学校や団体は年々増えています。 潟上水辺の会メンバーに作業日を割り当てたり、人数の制限をすることはありません。毎回何人ものメンバーが参加しています。 潟上水辺の会のメンバーのほとんどは農家です。修学旅行など作業は平日が多いのですが、忙しい時期でもみんなが都合をつけて参加しています。 トキ学習を楽しみにして、毎回作業に参加してくれる人もいます。潟上水辺の会のメンバーは農作業のプロで、作業には毎回一生懸命です。ただ、 今でも子どもたちと話をしたり、指導したりするときはちょっと照れます。

泥の中は移動も大変
(泥の中は移動も大変。助け合って作業します)

●思いがけない新しい活動が生まれた
潟上水辺の会を立ち上げる総会のときに、 潟上地区にある天王川の上流にたくさんのホタルが出るようになったという話が出ていました。トキ学習の受け入れと、 ホタルは関係がない感じがしましたが、みんなが何となく気になっていました。トキ学習のビオトープづくり作業でメンバーが集まると、 またホタルの話が出ました。そこで佐渡のホタル祭りで有名な久知河内地区のホタル祭りへ見学に行きました。
潟上地区に帰って改めて天王川を見ると、やはりホタルの数に驚かずにはいられません。「潟上水辺の会でもホタル祭りをやろう!」と、 一週間くらいで準備をして天王川のホタル祭りを開催しました。潟上地区の人が夜店を開いたり、 島内から懐かしいおもちゃ屋の屋台が参加しています。潟上地区やそれ以外からもお客さんが大勢来てくれました。平成16年から毎年開催して、 みんなに楽しんでもらっています。

 潟上ホタル祭り夜店
(潟上ホタル祭り。おもちゃ屋さんの夜店)

それだけ ではありません。トキ学習の受け入れではじまった潟上水辺の会の活動は広がっています。 地区の休耕田を使って佐渡市が進めているビオトープづくりを行ったり、潟上地区の環境保全型農業の窓口も担当しています。 トキ交流会館の裏山の整備にも取り組んでいます。今後は、手入れが行き届いていなかった山に遊歩道や東屋を設けて、 訪れる人に自然に親しんでもえる山にしたいと思います。
活動の失敗談もあります。以前トキ交流会館前の休耕田に水芭蕉がたくさん咲いたらきれいだろうと水芭蕉の種と苗を植えました。 その後ビオトープとして整備されてしまい「あれれ、なくなっちゃった」なんてことがありました。

里山の整備
(里山の整備)

●活動をするうち気付くことが出てきた
トキ学習を受け入れている中で感じるのは島内の子どもの参加が少ないということです。 島内のトキに関心が薄い地区と、かつての潟上地区は同じ状況だと思うので、気持ちや状況は分かります。 でも今は佐渡島内の子供たちにもっと関心をもってもらえたらと感じています。

ビオトープにも課題があります。つくったあとの維持管理です。 せっかくつくったビオトープも継続的に手入れをしなければ草に覆われて機能しません。潟上水辺の会では現在のところ年4回の草刈が精一杯で、 今一番の課題です。環境学習では、ビオトープをつくることだけではなく、維持していかなければならないことも伝える必要があります。
ホタル祭りを毎年開催して気付いたことは、エサが少ないと思われる川へホタルの生息地が移っていることです。 エサとなる生きものが多いはずの天王川のホタルが減って、近くにあるコンクリート3面張りの川に増えています。 ホタルのすむ環境が心配になり、ホタルの保全や繁殖方法が気になっています。

天王川
(夏、たくさんのホタルが飛ぶ天王川)

●トキを通じて地元に関心の輪が広がっている
潟上水辺の会に参加している地区の人たちは、トキや地域の自然に対する意識が変わって来ました。「トキのすむ環境のよい島」として、 地元に住む私たちが積極的に活動しなくちゃという意識が出てきました。

トキ交流会館やトキ学習、ホタル祭りに多くの人が訪れ、潟上水辺の会の活動も知られるようになってきた中で、 潟上地域全体の雰囲気にも変化が出てきています。潟上地区の多くの人が「潟上が何か変わってきたな」と感じていると思います。 地域に関わり地域として何かに取り組んで行こうという雰囲気が潟上地域全体に出てきています。

潟上地区には自然や、自然とともに人々が協力し合って暮らす田舎の生活がまだ残っています 。 そういった潟上地区の生活のことをお年寄りは知っているのですが、生活を便利にしようとみんなが一生懸命働いたので、 それを伝える機会や地域のつながりは少なくなりました。トキの活動を通して今までと違った集まり方ができつつあります。 トキに関係して島内外から来る多くの人たちとも交流することで、潟上地区の人のつながり方や、 トキと地元の地域を見る目線が少しずつ変わり始めています。潟上地区の自然や田舎らしさを生かしたり、 よさを発見しながら再びつながりあう機会なのかもしれません。

[ 掲載日 2008年04月15日 | 読みもの ▼ひとつ前へ戻る ▲ひとつ次へ進む ]